2025年、オランダ人アーティスト、ステファン・ケッペルと東京の写真家、澤田育久、そして北京を拠点とする出版社ori.studioによるプロジェクト「WHITE COPIES」が神保町の「The White」にて展開されました。本プロジェクトは、ケッペルの東京での滞在制作を契機として二つの展覧会を開催し、ドキュメンテーションブックとして結実するものです。
本展タイトル「WHITE COPIES」は、ケッペルが使用するドラフトプリンターのトナー切れアラートに由来します。東京郊外で澤田が撮影した写真をケッペルがプリントしている最中にトナーが減少し、マニュアルに記載された技術トラブルの項目が脳裏に浮かびました。この印刷の減衰と欠落の経験が、ギャラリー名の響きと結びつき、「WHITE COPIES」という名称へと結実しました。これらのイメージは、像が立ち現れ、また消えていくさまを思わせ、古典的な暗室写真を想起させます。そして、白いイメージは、純粋さや光への欲望とも関わっています。
ケッペルは滞在中、建築と都市構造を手がかりにリサーチを行い、ブロック、窓、公共の椅子など、都市の匿名的な部位に着目して撮影しました。あわせて、さまざまな種類の印刷用紙や古書、フィールドワークで見出した廃棄ロール紙を、将来的な制作素材として収集しています。滞在後は、東京で撮影したイメージをもとに、アムステルダムのスタジオでプリント作品を制作。並行して澤田とリモートでイメージの交換と再構成を続け、撮影・印刷・再撮影という反復を通じて、都市像を多層化させています。
本展では、東京で収集した素材を契機とした実験的な制作や、共同プロセスに基づくパフォーマティブなアプローチに加え、2025年の展覧会以降に制作された最新のプリント作品も展示します。これらの作品群は、異なる都市経験の交差によって、固有性を超えて立ち現れる、匿名的で普遍的な都市構造を浮かび上がらせます。さらに、今秋ori.studioよりリリース予定の「WHITE COPIES」のダミーブックや、その制作過程もあわせて展示し、プロジェクト全体を俯瞰して紹介します。
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#on view / kanzan gallery は、写真集の発行記念展や巡回展、または展示の実験の場として、写真・映像作家が主導する展示企画をサポートするプログラムです。当展は、第15回目となります。
Profile
Stephan Keppel ステファン・ケッペル
1973年生まれ。オランダ・アムステルダム在住。アーティスト/ブックメイカー/プリントメイカー
ロイヤル・アカデミー・オブ・アート(ハーグ)でオートノマスアートを専攻(1994–1998)。都市を「グラフィックな現象」として捉え、写真、印刷、本、インスタレーションを横断した作品を制作する。廃棄された建築図面用コピー機(Océ 7055など)を用いた実験的な大判プリントを特徴とし、街歩きや自転車移動を通じて収集した都市の断片を重ね合わせ、建築や都市の痕跡を再構築してきた。
主な出版物に『Entre Entree』(2014/Fw:Books)、『Flat Finish』(2018/Fw:Books)、『Soft Copy Hard Copy』(2021/Fw:Books)がある。書籍を完成形ではなく次の制作につながる「出発点」と位置づけ、出版・展示・印刷実験を有機的に循環させることを重視している。
現在は、日本の印刷文化と都市歩行を組み合わせた新たなプロジェクトを進行中で、東京での展示とドキュメンテーションの出版を構想している。建築の小さな修繕跡や痕跡に着目し、都市の質感を捉える写真/印刷シリーズを展開する予定である。
主な展覧会に「HARD COPIES」(2021/Camera Austria Kunsthaus Graz、オーストリア)、“Unfolding Cities”(2021/AFF Galerie、ベルリン)、“Soft Copy Hard Copy”(2021/Enter Enter、アムステルダム)があり、作品はステデライク美術館、アムステルダム市立アーカイブ、カナディアン・センター・フォー・アーキテクチャー(CCA)、ICPニューヨークなどに収蔵されている。 Somfy International Photography Award(2021)最優秀賞受賞。モンドリアン財団(Mondriaan Fonds)から複数の助成を受けている。
HP: https://stephankeppel.info/
澤田育久 Ikuhisa Sawada
1970年生まれ。東京在住。写真家/The White主宰。
金村修のワークショップに参加後、本格的に写真活動を開始。2014年よりオルタナティブスペース「The White」を主宰。カメラの記録性と機械的特性を活かし、日常では見過ごされがちな視点を提示することで、鑑賞者を新たな知覚体験へと誘う作品を制作している。
代表的なプロジェクト「closed circuit」(2011年〜)では、駅などの公共空間で撮影した大判写真を層状に展示し、鑑賞者の動きに応じて関係性が変化する風景を生み出す。 主な展覧会に、αMプロジェクト「Mirror and Hole」(2017/東京)、“space/guide/volume”(2021/CAVE-AYUMIGALLERY/東京)、“Export / Import”(2021/The White/東京、アムステルダム、東京オランダ大使館)、“OTHERS”(2023/The White/東京、Fred & Ferry/アントワープ、Archipelago Books/上海)がある。主な出版物に『closed circuit』(2017/The White)、『substance』(2018/RONDADE)、『OTHERS』(2024/Ori.studio、Marc Nagtzaamとの共著)がある。
HP: https://sawadaikuhisa.com/
ori.studio オリ・スタジオ
デザイナーのマキシム・コーミエとファン・シュエチェンは、2016年にori.studioを、2018年に出版レーベルda-in-printを設立。2023年に両者の名称を統合し、現在ori.studioは、グラフィックデザイン・リサーチ・出版から成るテンセグリティ(張力構造)のような組織として活動しており、そのアウトプットは主に、書籍を軸とした継続的なプロジェクトのシリーズで構成されている。
HP: https://ori.studio/ja/