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Exhibitions

kanzan Curatorial Exchange “Spacing” vol.2

Voices Left Behind|菊田真奈

2025.11.8 Sat - 12.7 Sun

キュレーター:小池浩央
協力:プリンストン大学ニュークリアプリンストン

Gallery Talk|11月12日[水]18 - 19時(予約不要・参加無料)
菊田真奈(アーティスト) × 永井玲衣(哲学者) 進行=小池浩央

kanzan galleryではこのたび、時間と空間について考える展覧会シリーズ、kanzan Curatorial Exchange「Spacing」 Vol.2 として、菊田真奈の個展「Voices Left Behind」を開催いたします。

広島出身の菊田真奈はこれまで、広島の原爆死没者慰霊碑、東京の戦災樹木、長崎の原爆死没者名簿、パリに点在する記念碑や石碑などに関する集合的記憶とその忘却について思索を巡らせてきました。加えて、被爆者であり日本女性史研究の先駆者である加納実紀代(1940–2019)の遺品を通して彼女が示した女性たちの解放の方向を、また、沖縄の女性たちに受け継がれてきた伝統的な入れ墨を巡る記憶を現代の視点から問い直すことで、身体に内在する文化的記憶を探ってきました。

今回の作品「Voices Left Behind」では、数年前に広島大学からプリンストン大学に寄贈された原爆瓦(広島の爆心地近くを流れる元安川の川底から探し出されたもの)をモチーフに、物が保持する当時の記憶、また核の歴史に埋もれ忘れ去られた声たちに耳を傾けようとしています。2024年にプリンストン大学(原爆の開発を担ったマンハッタン計画とも関わりが深い)の森本涼助教授のもとで始まった広島大学に所属する学生有志とプリンストン大学の学生たちの交流において一部の企画・運営を担った菊田は、プリンストン大学の参加者が北米先住民にルーツを持つことを知ります。彼らのコミュニティは、ウラン採掘によって原爆開発に関与させられ、深刻な被爆被害を被ってきた歴史を持ちます。こうして原爆瓦を起点に、加害者と被害者といった単純な二項対立を越えて複数の記憶を辿るなかで、アーカイブ自体が持つ政治、つまり何を保管し何が忘れ去られるままになっていくのかということについて思索していきます。過去に拘るのは決してノスタルジーのためではなく、むしろ未来の出来事を呼び込むチャンスとして捉えているからです。今回の作品の起点となった原爆瓦も、またこの作品自体も、未来において新たに解釈され続け、その意味も変化し続けます。それゆえ過去に目を向け語り続けることは、決して終わりのない営為となるでしょう。

kanzan Gallery

Profile
菊田真奈きくたまな

1986年広島県出身。フランス高等メディアアート学校卒業。
広島、パリを拠点に活動。
菊田は、写真と記憶の再構築に着目し、写真が内包する「消失」の概念と記憶の「忘却」を呼応させる。これまで広島原爆慰霊碑、東京の戦災樹木、パリのモニュメント、捨てられた古い家族写真などを題材にフィールドワークや独自調査を行い、ドキュメンタリーやコンセプチュアルな形式で作品を制作してきた。他者の記憶との時間的な距離、ギャップや空洞、幽霊を考察する。
作品は、CNAP(フランス国立現代美術センター)、フランス写真美術館などに収蔵されている。

小池浩央こいけひろひさ

武蔵野美術大学大学院映像研究科修了後、フランス・ナント美術大学にてアーティスト・リサーチャー、エストニア芸術大学にて講師。現在はエストニア・タリン大学大学院博士課程在籍中。専門は写真論・フランス現代思想。研究テーマは、ジャック・デリダの概念的遺産に基づく写真における遅延・喪・贈与についての考察。主な論文に「Lein ja fotograafia: Jacques Derrida fototeooria」(Etüüde nüüdiskultuurist; 9, 2021)、「The noeme of photography: the paradigmatic shift in the photographic theory of Roland Barthes」(Kunstiteaduslikke Uurimusi / Studies on art and architecture, 28 (3-4), 7-26., 2019)。

 

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