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Exhibitions

kanzan Curatorial Exchange 「生死」 vol.1

flowing back|頭山ゆう紀

2026.10.3 Sat - 11.8 Sun

キュレーター:小池浩央
協力:POETIC SCAPE

Gallery Talk|10月3日[土]16 - 17時(予約不要・参加無料)
頭山ゆう紀 × 小池浩央(当展キュレーター)

kanzan galleryではこのたび、生と死について考える展覧会シリーズ、kanzan Curatorial Exchange「生死」 vol.1 として、頭山ゆう紀の個展「flowing back」を開催いたします。シリーズタイトルの「生死」はフランスの哲学者ジャック・デリダが1975-1976年度に高等師範学校(ENS)で行った講義に由来し、そこではニーチェ、ジャコブ、フロイトなどの読解を通じて、生の要素と死の要素が混じり合うことで可能になる生について述べられています。このテーマは一般的には「生と死」のように表記されますが、デリダはこの「と」を取り去ることによって、生と死の境界を、対立でも同一化でもない差異性の働きとして思考します。1

頭山ゆう紀はこれまで、友人の死に強い喪失感を覚えつつも、写真の中にはその人の存在や過ごした時間が残るということを意識した「境界線13」や、突然亡くなった母の死を受け入れないまま榛名湖畔でその不在と過ごす中で生まれた「In fog」、そして末期の癌と診断された祖母が亡くなるまでの介護の合間に撮られた風景写真と祖母の目線を想像しながら撮影された白黒写真で構成された「残された風景」のように、親しい人々の死への応答として制作を続けてきました。

今回の作品「flowing back」は、モノクロームの『境界線13』(赤々舎 2008)や『さすらい』(abp 2008)以降、2009年から現在までの十数年の間に撮られた数多くのカラー写真の中から新たにセレクトされたもので構成されています。そこでは植物や水の写真に混じって、かつての「境界線13」には含めることができなかった母親の姿を認めることができます。

通常の喪の作業においては、愛する人の死によって引き起こされた苦痛が時間が経つにつれ徐々に和らいでいきますが、それが完遂したとき、ある意味でもう一度その人を失うことになります。その忘却に抗うこと、そのためには喪の失敗を肯定する必要があります。そこでは喪の作業に終わりがなく、完了することは不可能になります。そうすることでようやく死者は他者として生者のうちに留まり、そこから終わりのない内的対話が開始されるのです。しかし、もし死者を自分自身の中に引き受け、同化し、また理想化しつつ内面化してしまったら、その人はもはや他者ではなくなってしまいます。それゆえに、他者の他者性を重視すればするほど、喪の作業は失敗に終わる必要があるのです。

頭山は以前、ハン・ガンの『別れを告げない』(白水社 2024)に感銘を受けたと語りました。恐ろしくも美しい描写、読む側が想像を膨らませることのできる余白の大きさ、そしてそれを体験することの心地よさを味わう中で、彼女は写真でもそのようなことができないかと考えるようになりました。十数年の間に撮られた写真から構成された今回の作品には、一見してわかりやすいテーマやメッセージは見受けられません。しかし、その余白に自身の人生を重ね合わせることで、鑑賞者はさまざまな想像を膨らませることができます。「これまでは死と向きあって写真を撮っている感覚があったけれど、いまは生きることの方を考えている感じがします」2 と語る彼女にとって、こうして過去の写真を現在において再び見ることは、喪の作業の継続であるとともに、個人的だったものが外部に開かれていき、新しい発見に繋がるきっかけになるでしょう。

当展キュレーター:小池浩央

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1 デリダ、ジャック、『ジャック・デリダ講義録生死』吉松覚、亀井大輔、小川歩人、松田智裕、佐藤朋子訳、白水社、2022年、36頁参照
2 松井友里、井上ユリ、野村由芽、「個人的なことだけど、個人的すぎないように。写真家・頭山ゆう紀のアトリエへ」、me and you little magazine & club, 2026年7月2日、 https://meandyou.net/202607-yuhkitouyama/、(参照 2026年9月18日)

Profile
頭山ゆう紀 とうやま・ゆうき

1983年千葉県生まれ。東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。

生と死、時間や気配など目に見えないものを写真に捉える。自室の暗室でプリント作業をし、時間をかけて写真と向き合うことで時間の束や空気の粒子を立体的に表現する。
近年の個展に、「残された風景」(2025、POETIC SCAPE、PURPLE)および「In fog」(2025、studio 35minutes)がある。グループ展として「群馬AIRアートプロジェクト2022 成果展」(2023、Gunma Museum of Modern Art)や、KYOTOGRAPHIE International Photography Festival 2023における石内都との二人展「透視する窓辺」(2023、京都)に参加。近年の出版物には、『超国家主義—煩悶する青年とナショナリズム』(中島岳志著、頭山ゆう紀写真、筑摩書房、2018)、写真集『残された風景』(赤々舎、2024)、『In fog』(self-published、2024)などがある。

小池浩央 こいけひろひさ

武蔵野美術大学大学院映像研究科修了後、フランス・ナント美術大学にてアーティスト・リサーチャー、エストニア芸術大学にて講師。エストニア・タリン大学大学院博士課程単位取得退学。専門は写真論・フランス現代思想。研究テーマは、ジャック・デリダの概念的遺産に基づく写真における遅延・喪・贈与についての考察。主な論文に「Lein ja fotograafia: Jacques Derrida fototeooria」(Etüüde nüüdiskultuurist; 9, 2021)、「The noeme of photography: the paradigmatic shift in the photographic theory of Roland Barthes」(Kunstiteaduslikke Uurimusi / Studies on art and architecture, 28 (3-4), 7-26., 2019)。

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