Kanzan gallery 特別展示

「毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー」

渡邊耕一

 

キュレーター:菊田樹子|協力:The Third Gallery Aya

 

2022年12月20日[火]- 2023年2月5日[日]

*年末年始休廊:12月29日[木]-1月6日[金]

[火曜-土曜]12:00-19:30

[日曜]12:00-17:00

月曜定休/入場無料

 

GALLERY TALK|2023年1月14日[土] 16:00-17:30

渡邊耕一(写真家)× 田坂博子(東京都写真美術館学芸員/恵比寿映像祭キュレーター)

入場無料/予約不要

 

会場にて写真集『毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー』を販売しております。ぜひお手にとってご覧ください。

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毒消草の夢

デトックスプランツ・ヒストリー

著者:渡邊耕一

発行:青幻舎

ページ数:160ページ

言語:日英併記

価格:6,600円(税込)

寄稿:アナ・ツィン氏(カリフォルニア大学サンタクルーズ校文化人類学科教授)

 

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artscape 2023年02月15日号に、 写真評論家・飯沢耕太郎氏による渡邊耕一「毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー」展のレビューが掲載されています。

>>【artscape 2023年02月15日号(artscapeレビュー)】渡邊耕一「毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー」|飯沢耕太郎

 

 

>>【artscape 2023年06月15日号(artscapeレビュー)】菅野純『Planet Fukushima』|飯沢耕太郎

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[概要]

東京・馬喰町「kanzan gallery」では、渡邊耕一の個展「毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー」を開催致します。本展は、The Third Gallery Ayaで今年9-10月に開催された展覧会をkanzan galleryの空間に合わせ、展示構成再考した巡回展です。以下、The Third Gallery Ayaで開催された際のテキストを掲載します。

 

 前作のシリーズ〈Moving Plants〉では、欧米諸国で日本原産の植物イタドリが外来侵略植物として恐れられていることを知ったことから、ヨーロッパやアメリカへの撮影を敢行。身近な植物の背後に広がる人間と植物との歴史、近代の複雑な流通やそのネットワークに行き着きました。人間が動くと植物も動くという当たり前の事実を改めて認識しました。

 今回は、昆答刺越兒發(コンタラエルハ)という謎の薬草に取り組みました。「薬」としての植物の側面に着目し、世界中で取引される商品として資源化される植物の姿を浮き彫りにします。その道行は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大に翻弄され、治療法を求め続けるわれわれの姿と重なります。

 

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 この度、kanzan galleryでは特別展として渡邊耕一「毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー」を開催します。当ギャラリーでは2016年の「Moving Plants」に次ぐ渡邊の2回目の個展となります。

 

2017年、渡邊は香港の街中で、オランダ東インド会社が発行した古い植物誌で見たある木に偶然出会います。ハート型に似た不思議な形の葉を持つその植物は、「シロバナソシンカ」という名前で紹介されていました。しかし、江戸末期の本草学者・馬場大助は自著の中で、この植物を「コンタラエルハ(昆答刺越兒發)」と記しています。

さまざまな文献を当たるうちに、渡邊は大航海時代のメキシコの植物誌から、コントラは「毒を無効にする」、イェルバは「草」を意味する——つまり、「コンタラエルハ」は「毒消草」なのだという事実にたどり着きます。しかし、その植物誌に掲載されている植物の葉の形は、馬場の指す「コンタラエルハ」とは明らかに異なっていました。

果たして、本当の「コンタラエルハ」とは——?

調べを進めていくと、同じ名前を持ついくつもの異なる植物が現れては消えていきます。渡邊が足を踏み入れたのは、「15世紀から現代に至る500年におよぶ時間とヨーロッパ-アメリカ-アジアを結ぶ広大な空間にひろがる迷宮」だったのです。

 

「毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー 」は、名もなき植物が人間に「薬」という役割と「毒消草」という名前を与えられ、値段を付された「商品」となり、地球規模で移動してきた歴史を伝えています。それは十分に興味深い事実であるし、資本主義への批判や環境問題の提起に結びつけることもでき、ここまでなら植物学、歴史研究やジャーナリズムの範疇と言えるでしょう。しかし、この作品がそれだけに終わらないのは、渡邊がオランダ、インドネシア、和歌山、そしてメキシコへと足を運び、史実の間(あわい)に見え隠れする視覚化された何かを掬い取り、繋ぎ合わせ、私たちの前に提示しているからに他なりません。サイズの異なる写真作品、動画、そして17世紀の植物誌や薬草事典で構成されたこの展示は、過去・現在、意識・無意識について主観的に読み解き、実感として自らの体内に取り込むことを促します。

祈るようにこの薬草を手にした先人の、それに価格を付けた商売人の心の内に、見知らぬ土地に根を張った植物の営みに、その葉を揺らす熱気を孕んだ風に思いを馳せるとき、「植物は種子が見た夢」というアボリジニの言葉が真実味を帯びて迫って来ます。本当の「コンタラエルハ」とは——?その答えをこの展示から見つけていただけたらと思います。

 

当展キュレーター 菊田樹子

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[プロフィール]

渡邊 耕一

1967 大阪府生まれ

1990 大阪市立大学文学部心理学専攻卒業

2000 IMI研究所写真コース修了

 

個展

2022「毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー」The Third Gallery Aya、大阪

2018 「Moving Plants」資生堂ギャラリー、東京

2016 「Moving Plants」Kanzan Gallery、東京

2015 「Moving Plants」The Third Gallery Aya、大阪

2010 「Moving Plants」The Third Gallery Aya、大阪

2008 「Moving Plants – in the thick of itadori」The Third Gallery Aya、大阪

2005 「The name of grassland / 草むらの名前 –unknown islands where itadori grows 」The Third Gallery Aya、大阪

2003 「草原の方へ / grassland」The Third Gallery Aya、大阪

 

グループ展

2021 「ART OSAKA 2021」大阪市中央公会堂、大阪

2018 「daikanyama photo fair 2018」代官山ヒルサイドフォーラム、ヒルサイドプラザ、東京

「ART in PARK HOTEL TOKYO 2018」パークホテル東京、東京

2017 「Moving Plants」RØNNEBÆKSHOLM、ネストヴェズ(デンマーク)

2015 「ART OSAKA 2015」ホテルグランヴィア大阪、大阪

2012 「Quiet Boys/クワイエット・ボーイズ “男の子写真” は可能か?」MIO PHOTO OSAKA、大阪

2010 「アートフェア東京2010」東京国際フォーラム、東京

2008 「Comical & Cynical」Gallery Jijihyang、パジュ(韓国)

2007 「Comical & Cynical」ドーンセンター、大阪

2006 「from the Garden」The Third Gallery Aya、大阪

2000 「phantome」SUMISO、大阪

 

出版

2015 『Moving Plants』青幻舎

2022 『毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー』青幻舎

その他

2003 「川崎清 美術館建築とその周辺」展 ポスター・カタログ図版、国立国際美術館

 

 

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